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10.Phage DNA の精製 -プレート・ライセート法 (魚住尚紀)

Phage DNAの回収・精製には、液体培地を用いる方法と、ここに記したプレート・ライセート法がある。プレート・ライセート法は手数がかかるのが欠点だが、確実で失敗が少ない方法である。最終段階のPhOH/Chl抽出とエタノール沈殿の回数は数を決めてやるよりも、界面、沈殿の様子を見て適宜判断するのがよい。消化する制限酵素によって必要とされる精製度も違ってきます。

 

1.用意するもの

diluent 10 mM Tris-HCl pH 7.5

10 mM MgSO4

PEG液 5 mM Tris-HCl pH 7.5

10 % PEG6000 (100 g/l)

1 M NaCl (58 g/l)

5 mM MgSO4・7H2O (1.23 g/l)

2.手順

培養

トップアガーには必ずアガロースを用いる。アガーには阻害物質が含まれているらしく、回収したDNAの制限酵素での消化が悪くなる。

15 cm × 9 cm 角プレートにファージを感染させた大腸菌を播き、一晩培養して全面溶菌させる。プレートは新しいものを使い、湿度を高く保つため、ぬらしたキムタオルとともに袋に入れ、正立させて培養するのがよい。

ファージ粒子回収

プレートにdiluent 12 mlをはり、クロロホルムを数滴たらして、室温90min. 震盪し、得られるファージ懸濁液を50 mlチューブに移す。

プレートにdiluent 4mlを入れ、洗いこんで懸濁液に合わせる。

4℃、10,000 × g、10 min. 遠心し、デブリスを除く。(上清を新しいチューブに移す)

RNase 10 μg, DNaseI 10 μg 加え、37 ℃, 10 min. 反応させて大腸菌由来の核酸を分解させる。

PEG液を15 ml加え、2時間放置する(on ice)。

4℃、10,000 × g、10 min. 遠心し、上清を完全に除く。

沈殿を1 ml diluentに懸濁し、エッペンチューブに移す。

4℃、12,000rpm、10 min. 遠心し不溶物を除く。

上清を15 mlチューブに移し、RNase 2 μg 加え、室温10 min. 放置。

ファージ粒子破壊

0.5 M EDTA 50μl, 10 % SDS 30 μl 加え、65 ℃, 25 min. 放置。

ファージDNA回収

1 ml PhOH/Chl 加え、よくvortexしてから遠心。上層回収する。

PhOH/Chl 抽出を数回繰り返す。(中間層が見えなくなるまで)

1 ml 5M NH4OAc を加え、エタノール沈殿する。

沈殿を200 μl TEに溶解し、200 μl 5M NH4OAc を加え、on ice 30 min. 放置。4℃、10,000 × g、10 min. 遠心し、透明なゲル状沈殿をとらないように上清を1.5 ml チューブに移す。

800 μl エタノール加え、エタノール沈殿する。

エタノール沈殿を数回繰り返す。(DNAの沈殿の濁りがとれるまで)

 

参考:遺伝子工学の基礎技術 pp.45-48 (バイオマニュアルシリーズ、羊土社)