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26.ABI 373 DNA Sequencer の使い方 FS 編(横溝岳彦)

Version up @1998年3月18日

 

Dye Terminater Cycle Sequencing kitがversion upし、簡単な操作で1tube reactionで400-500bp程度を読むことができるようになりました。このマニュアルだけではなく、必ずSequencerのマニュアルも読んで下さい。同時に24-36sample読めますからsampleが少ないときはお誘い合わせの上、相乗りすることをおすすめします。実際の手間はほとんどゲル板作りです。

 

標準的なプロトコールとしては

Day0 朝からPlasmid精製、PCR(4h),

Day1 ゲル板作り(慣れれば30 min), PCR産物の精製(30 min)、泳動(1-2 h、後は16h放置)

Day2 解析、片づけ

となりますが、頑張れば、Plasmid精製から当日中に泳動を開始することもできます。

 

#1 Template Plasmidの調整(Mini-prep+PEG沈法)安いのでできるだけこれで読みましょう。

1)LB(TB) 1-2mlにて大腸菌を終夜培養

2)集菌

3)200μlのGTEに懸濁

4)300μlの0.2M NaOH/1% SDSを加え、5分放置(転倒混和のこと)

5)300μlの3M KOAc, pH 4.8を加え、5分放置(転倒混和のこと)

6)RNaseを少量加え、37℃、20分。(GTEに少量加えておいてもOK)

7)400μlのクロロホルムを加えvortex(Phenolはtaqを阻害するので使わないこと)

8)室温で10分間遠心し、supを回収

9)等量のイソプロでDNAを沈殿させる(遠心室温10分)

10)32μl H2Oに溶いて、8μlの4M NaCl, 40μl の13% PEG6000または8000で沈殿させる。(氷上20分、遠心4℃、20分)

11)70% EtOHでwashし、TEまたは水に溶かし、吸光を測る。この場合やや多めの1 microgram相当をシーケンスする。理想的にはこの段階でゲルでpurityをチェックするのが望ましい。(RNAはほとんど見えませんでした)

 

#2 Qiagen精製のplasmidは、PEG沈無しで読むことができます

*最終的な収量はpGEX-LTB12DH(6000bp、一応high copyですが通常pBluescriptの半分くらいしかとれない)の場合、LB 10mlから5-20 μg(平均15μg), TB 10mlから40-120 μg(平均60μg)でした。pBluescriptではもう少しいいと思います。pGEX場合、templateとして0.5-1 μg使いましたが、34cmのゲルで400 bpまでNが1個あるかないかでした。kit添付のtenplateは550bpまでNo Nです(!)。

 

#3 Primer

PrimerはSequenaseに使う17mer程度のものではAnnealが悪いので、少し長く作ったPrimerを用いる。一般的に用いられるReverse, M-20, T3, T7, KS, SK(いずれもABI用に作成して読めることを確認済み)はコントロール(M-21)にあわせて、0.8μMに調整して5研の-20 ℃に入っています。自分で作成するときのTmの目安は、2x(A+T)+4x(G+C)で50-60℃(マニュアルでは40-60となっているが、低いと読めない)である。

 

#4 Cycle sequence反応

Reaction mixture

FS premix 8 μl

Double strand DNA 0.25-0.5 μg

Primer 3.2 mole (0.8 μM を4 μl )

water x μl

-----------------------------------

Total 20 μl

 

Hot startは必要ないが、氷上でmixして、circularの温度が96℃に上昇してからHoldしてTubeを差し込んですぐにstartすること。室温からstartするとMiss annealを起こしてしまい、Backgroundが高くなります。なお、FSになってからは、Double strand DNA 0.25-0.5 μgをtemplateにします。

Perkin-ElmerのThermal cycler480では#12(96度30秒、50度15秒、60度4分を25cycle)で、Thermal cycler9600ではFile 8(96度10秒、50度5秒、60度4分を25cycle)で反応させれば自動的にPCRを行って4℃でkeepするように設定してあります。9600はoil freeでOK(micro tubeを使うこと)ですが、480はoilが必要です。

 

#5 シーケンス反応後の精製

1. Tube あたり50 μl EtOH, 2 μl 3M NaoAcを1.5 ml tubeに分注しておく。

2. PCR productを全量移す。

3. On ice 10分。

4. 遠心20分、上清をのぞく。

5. 70 % EtOH 250 μl でwash(これは必要です)

6. ふたを空けて5分室温放置後、Loading bufferに溶かす。(24 wellの場合は4 micro L, 36 wellでは3 micro L)

Pelletは見えないことが多いので、注意してエタ沈すること。心配な人はCarrierとして1 mg/ml Glycogenを1 micro L入れてエタ沈すればpptが見えるので安心です。またPelletに色(Pinkのことが多い)が付いているときはバックが高くてまず読めませんから、再度エタ沈を行うこと。

 

#6 ゲル板の調整

マニュアルでは6%であり、現在マリソル(販売 東洋紡)のPremix gelを使っている。長く読もうとするとき、ゲル板の調整は大変重要で、流し込んでから、最低2時間、気温の低いときは4時間位は放置しておいた方が望ましい。(アクリルアミドの重合が大切のようです)。

1 マリソルのPremix gelを室温に戻す。このときureaが析出しているようなら、しばらく放置する。(決して振ってはいけない。特に泡は要注意です。)

2 ゲル板を専用の洗剤でよく洗う。(傷をつけないように注意。ゲル板は1 set 6万円)

3 Isopro+ ケイドライでゲル板をよく磨く。

4 Plate checkを行い、OKなら組み立てる(マニュアル参照)。

5 マリソルのPremix gelにAPS stickを1本加え、静かに20回転倒混和する。このとき空気が入らないように注意する。

6 先を切り、流し込む。上にスペーサーを入れて、サランラップで覆う(乾燥防止)。

7 そのまま2-4時間以上放置する。

 

#7 泳動

1 TBEを2l 作る。

2 ゲル板のテープを全て除き、ガラスの表面を専用の洗剤(ケイドライ)で洗う。ゲルの上端は蒸留水でリンスする。

3 Isopro+ ケイドライでゲル板をよく磨く。

4 Plate checkを行い、OKなら組み立てる(マニュアル参照)。Pre Run を10分間行う。

5 サンプルを95-100℃、2 min. denature後、急速冷却しon iceにする。

6 再度ウェルを洗う(極めて大切)。

7 サンプルをロードし、start. (マニュアル参照) 各種設定を行う。大体マニュアル通りだが、マリソルのPremix Gel を使うときは電力量を26-28W(マニュアルでは30W)にした方がよい。サンプルの数が多いときは、一つおきにdenature、Loadを行う。2時間位で見え始めるが、この段階で肉眼で(もちろんモニター上ですよ)ラダーが見えなければ失敗です。

 

マニュアルに書いていないTips

1)両端のレーンの一つ外側に4 μl のLoading bufferをのせるとSmilingを防ぐことができる。

2)泳動する内に、次第にBackgroundは低くなるので、最初の蛍光光度の設定は高め(青が950位)にしたほうが長く読めます。(PMT voltageの設定)

 

#8 分析

分析はマニュアルを参考にしていただきたいのですが、注意点を一つ。Gel fileを保存したくなりますが、別の名前にするとシステムが動かなくなるので、絶対に行わないで下さい。どうしてもとっておきたい人は、自分のHard diskか、MOに入れること。原則として泳動の翌朝には必ず解析し、データは自分で管理すること。終えたら誰かが上書きすると考えて下さい。多数のシーケンス反応を統合する際は、ABIの専用ソフトである、Autoassemblerを使うと便利です。