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35.Qia quick によるプラスミドの同時大量調整(川沢百可)

当研究室ではQIAGENのMiniprep Kitを使用しています。このキットでは、アルカリ法のBirnboim & Dolyによる変法に基づいて粗精製したplasmid DNAを、高塩濃度条件下でシリカゲルのカラムに吸着させた後、TEや水などの低塩濃度溶液で溶出し回収するという方法をとっています。途中、フェノールやクロロホルムでの抽出の必要もなく、簡便かつ高純度のplasmid DNAが回収できます。回収したplasmid DNAは種々の酵素反応やsequence、哺乳動物細胞へのtransfectionにもdirectに使えるとされますが、同じくQIAGENのPlasmid Midi, Maxi Kitなどを使って大量調製したものの方が精製度や回収量は優れていますので、ligationやtransfectionなどのより厳密な用途には、面倒でも再度調製しなおしたmidi-prep DNA(横溝さんのQiagen plasmid kitによるPlasmid精製法の項を参照して下さい)などを使用して、mini-prep DNAはせいぜいmappingぐらいの目的にのみ使用することをお奨めします。

また、QIAGENからは多種類のMiniprep Kitが発売されていますが、現在のところ、一度に調製するサンプル数に応じて、以下のキットを使い分けています。

(1)QIAprep Spin Plasmid Kit(250回分;商品番号DG-0271-06;定価46,000円)---カラムを個別に扱うタイプ。1~20個ぐらいのサンプルを処理する時にはこれで十分。

(2)QIAprep 8 Plasmid Kit(50回分;商品番号DG-0271-44;定価85,000円)---8連のカラムを吸引装置(吸引ポンプ、カラムのホルダーなどを用意する必要あり。ホルダーはQIAvac MANIFOLD 6S;商品番号DG-1195-03;定価81,000円を使用しています。)に装着して扱うタイプ。一度に6個のカラムストリップを装着できるので48個までの多数のサンプルを扱うときには便利。

以下にそれぞれのキットの使用方法を示しますが、キット添付のプロトコールも十分参考にして下さい。

(1)QIAprep Spin Plasmid Kit

1. single colonyを爪楊枝などでpick upし、1.5 ml LB (Ampicillinを100μg/mlの終濃度で加えたもの)中にて37℃、overnight shaking culture。

2. 翌日、培養液を1.5 ml eppendorf tubeに移し、卓上遠心機で10,000rpmぐらいで2分遠心、集菌する。Supは集めて、ハイターを入れてから捨てましょう。

3. Buffer P1を250μl加え、よくvortexする。

4. Buffer P2を250μl加え、転倒混和で混ぜる(vortexすると、genomic DNAが切断されてコンタミする)。

5. Buffer N3を350μl加え、転倒混和で混ぜる。タンパク質、debrisが析出する。

6. 卓上遠心機で10,000 x g(12,000 rpmぐらい)、10分遠心(冷却の必要なし)。この間にQIAprep spin columnを2 mlのcollection tubeに装着する。

7. 約800μlのsupをピペッティングでカラムにアプライする(pelletを持ち込まないように)。10,000 x g(12,000 rpm)、1分遠心。

8. Flowthroughを捨て、再度カラムに0.5 mlのBuffer PBを加えて10,000 x g(12,000 rpm)、1分遠心。この洗いでヌクレアーゼや余剰の炭水化物などを取り除きます。

9. 同様にflowthroughを捨てた後、0.75 mlのBuffer PEを加えて10,000 x g(12,000 rpm)、1分遠心。

10. 同様にflowthroughを捨てた後、そのまま10,000 x g(12,000 rpm)、1分遠心。カラムからwash bufferを完全に取り除きます。

11. カラムを新しい1.5 ml eppendoef tubeに装着し、50μlのTEもしくはDDWをアプライ。1分放置した後、10,000 x g(12,000 rpm)、1分遠心。Plasmid DNAを含む溶液が約45μl溶出されてきますが、回収量をより稼ぎたい場合に、溶出液の容量を100μlまでスケールアップさせることができます。このようにして最終的に約5~10μgのplasmid DNAが回収できます。

(2)QIAprep 8 Plasmid Kit

1. から4. までは(1)と同じ。

5. Buffer N3を500μl加え、転倒混和で混ぜる。タンパク質、debrisが析出する。

6. 卓上遠心機で10,000 x g(12,000 rpmぐらい)、10分遠心(冷却の必要なし)。この間に吸引装置をセットアップ。ホルダー(QIAvac MANIFOLD 6S)内部に廃液用のトレーを入れ、カバーのスロット部分に8連のカラムを装着し、しっかりロックする。耐圧ホースでホルダーと吸引ポンプを連結すればOK。

7. 約1 mlのsupをピペッティングでカラムにアプライ(pelletを持ち込まないように)した後、吸引する。

8. 吸引ポンプのスイッチを切り、カラムに1 mlのBuffer PBを加えて、再度吸引。この洗いでヌクレアーゼや余剰の炭水化物などを取り除きます。

9. 同様に吸引ポンプのスイッチを切った状態で、カラムに1 mlのBuffer PEを加えた後、再度吸引。

10. 9. をもう一度繰り返し、flowthroughが落ちきった後も更に5分間吸引を続けて、カラムのシリカゲル膜を完全に乾燥させる。(*この時、吸引の強弱にもよりますが、現在当研究室で使用している吸引ポンプの場合、5分間の吸引ではカラムの乾燥が不十分なことが多く、そのままですと次の溶出の際にBuffer PE(エタノールを含む)を持ち込んでしまうことになりかねませんので注意して下さい。カラムの内壁や廃液ノズルの周辺部(特にここにBuffer PEが残存していることが多い。)を目で見て液体の痕跡がないことを

確認してから次のステップに進んで下さい。

11. キット添付の1.2 ml容のマイクロチューブ(8連のもの。専用のキャップもついてきます。)をチューブラックにセットし、QIAvac MANIFOLD 6Sから廃液トレーを取り出して代わりにチューブラックをセットします。100μlのBuffer EBもしくはTE、DDWをアプライ。1分放置した後、吸引する。

ほかにも、カラムが96 wellのプレートタイプになっていて、96サンプルを一度に調製できる、というキット(QIAprep 96 Turbo Miniprep Kit;4回分;商品番号DG-0271-91;定価149,000円)もありますが、この使用方法は概ね(2)のQIAprep 8 Plasmid Kitの使用方法に準じていますので、ここでは割愛させていただきます。