ホーム » プロトコール集 » 分子生物学編 » 8.大腸菌取り扱い方(南道子・粂和彦)

8.大腸菌取り扱い方(南道子・粂和彦)

もう少し改訂する予定です。(98年4月2日現在・粂)

 

大腸菌の特色

 大腸菌の利点は、増殖速度が早く、簡単な培地で生育し、代謝活性が高いことなど基礎研究において有用性が高いことである。また、プラスミドと呼ばれるgenome 外の自己複製DNAを持たせて、これを簡単に単離することができるため、分子生物学の最も基本的な「道具」として使われる。

 

以下に保存法、培養法、用いる用具の滅菌法などについて述べる。

保存方法

1 短期保存

 プレートによる保存(1週間)または、菌液による保存(2ー3日)は4℃で行う。

2 長期保存

 凍結:大腸菌は、菌液に対し7-10%になるようにDMSO溶液を加えるか、または50%グリセロールにて-80℃で保存する。

 

スタッブ:蓋付きの試験管にスタッブアガロース(0.7-8%アガーSOB)を入れ菌を接種する。フタをきつく閉めることにより、菌が一定に繁殖後低酸素状態となり、胞子状態で室温長期保存可能である。ただし、フタがゆるんだり、あまり高温にさらすと、死滅することもあるので注意。

 

培養方法

1.液体培養

大腸菌はなるべく好気的な条件下で培養するのが望ましい。少量の場合は蓋付きのチューブを用い、大量培養の場合は坂口フラスコまたはバッフル付きのフラスコを用い、空気を十分とりこませるようにする。そのため、通常は、容器の容量の10-20%を目安にする。(50mlチューブで10mlまで、1lフラスコで200mlまで)。また栄養に富んだ培地の方が大腸菌の収率はよい。

2.プレート培養

 単一のコロニーを得るために行う。あらかじめ暖めておいたプレートにディスポプラスチックループ(または火炎滅菌した白金耳)の先に菌液をつけてSTREAKしたり、コーンラージ棒でプレートの中央に垂らしたりして菌液を塗り広げる。

  

菌密度測定法

光度計による密度は、600nmの吸光による測定でする。(実際には、500nm - 700nm でもほとんど同じ)その際、1ODがrecA+の菌で1.3-1.5x 10 8 細胞、recA-の菌で2-2.5x 10 8 細胞/mlに換算する。

  

滅菌方法

1.乾熱滅菌

 目的とする大腸菌を雑菌の混入なしに培養するために、使用する器具や材料を滅菌する必要がある。ガラス器具など180℃で3時間、加熱する。

2.オートクレーブ滅菌

 培地や試薬の滅菌法に用いる。高圧滅菌器を用い加圧蒸気により100℃以上に加熱する方法で、通常121℃20分である。オートクレーブのなかに培地などがこぼれたときは、機械前面の天板を取り外し下部に飛び出している管の先のスクリュウキャップをはずし中の液を暖かいうちに回収し、機械の中にに水を入れてさらに流しきれいにする。滅菌する培地の量が多い場合などは、20分では不十分なことがあり、注意を要する。

3.濾過滅菌

 オートクレーブ滅菌では滅菌できないような試薬を滅菌するときに使う。メンブレンフィルター0.22μmでは完全な滅菌を目的にした場合に用いられる。通常はメンブレンにシリンジをつけて濾過するが、ペリスタポンプを使用すると大量に濾過するときに便利である。