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8.MAPKK、MAPK 測定法(和賀巌)

1.MAP Kinaseの測定

 

MAP Kinase の活性化を評価するには、MBP(ミエリンベーシックプロテイン)やMBP2(マイクロチュウブルアソシエイテッドプロテイン、ツウ)のリン酸化の測定、EGFレセプターやMBPのリン酸化部位ペプチドを用いる方法、ゲル内MBPリン酸化アッセイ、ゲルシフトアッセイなどが知られています。ここでは、論文でよくみかけ、しかも簡便なMBPのリン酸化を測定する方法を書きます。

 

(1). 用意するもの

lysis buffer(20mM Tris(pH 8.0), 20mM β-glycerophosphate, 1mM Na3VO4, 2mM EGTA, 2mM DTT, 0.1mM PMSF)

4x kinase buffer (2.5mg MBP, 80mM Tris (pH7.5), 10 mM MgCl2, 1mM MnCl2, 200μM ATP, 8μM Protein Kinase Inhibitor Peptide (rabbit sequence), γ32P-ATP(1μCi/sample))

stop solution (0.1 N HCl, 1mg/ml BSA)

(2). 方法

1. 細胞(サブコンフルエント)を血清を含まない培地で12~24時間培養する。

2. リガンドで刺激(30sec~90min)する。

3. 培地を吸引除去し、すばやく液体窒素で凍結する。

4. 凍結したculture dish を氷上で融解する。

5. lysis bufferをdish中央にいれ(6 cm dishの場合 500μl)、細胞を溶解する。

6. lysateを15K rpmで5 min (4℃)遠心し細胞核などを除く。

7. 上清 (15μl) に4x kinase buffer (5μl)を混合し、25℃で20分間反応させる。

8. stop solution (3μl)を添加し反応を止める。

9. P-81ホスフォセルロースペーパーに反応液(10μl)をスポットする。

10. 0.5%リン酸にて、二時間ほど洗浄する。

11. P-81ペーパーを風乾し、チェレンコフ法で測定する。

(3). 参考

MAP kinase 活性は、MonoQカラムで100~300mM NaCl付近に溶出されるので、このフラクションでアッセイすると感度がよい。Qセファロースをもちいて簡便にMAP kinase 活性を濃縮することも可能である。

2.MAPKK(MAP kinase kinase,MEKとも言う)測定法

 

MAP kinaseをリン酸化することを指標に評価する。用いる基質が自己リン酸化をしないようにリン酸化能を欠く組み替え変異体MAP kinaseを用いるのがよい。

 

(1)用意するもの

lysis buffer (20mM Tris(pH 8.0), 20mM β-glycerophosphate, 1mM Na3VO4, 2mM EGTA, 2mM DTT, 0.1mM PMSF, 150mM NaCl)

ATP mixture (20mM HEPES (pH7.5), 2mM EGTA, 12.5mM β-glycerophosphate, 50 mM MgCl2, 250μM ATP, γ32P-ATP(1μCi/sample))

recombinant MAP kinase (京大、西田栄介先生よりいただく)

(2)方法

1. lysateを15K rpmで5 min (4℃)遠心し細胞核などを除く。

2. lysis bufferで3回洗浄したQセファロース(200μl)とlysateを混合し、4℃で30分結合させる。

3. 15Krpm、3分遠心して上清を回収する。

4. 上清(9μl)にATP mixture( 3μl)とrMAP kinase(3μl)を混合し、30℃で30分間反応させる。

5. SDS-PAGE後、ゲルをオートラジオグラフィーやFuji-BASにて解析する。

 

MAPキナーゼのアッセイ(改定版:Micro-Trap Assay法)

 

概略

細胞をリガンドで刺激した後、凍結させ、Lysis Bufferにて溶解し、Qセファロース

でMAPkinaseを粗精製し、substrateに反応させる。それを、P81ペーパーにスポットして、洗浄後にイメージアナライザーで計測する。

 

用意するもの

細胞(おもにRAW264.7マクロファージを使用した)

培養培地(10%FCS-DMEM)

BSA培地(serum depletion のために、おもに 1%(W/V)BSA-DMEMを使用した)

Lysis buffer : 20 mM Tris(pH8.0), 20 mM ァ-glycerophosphate, 1 mM NaVO4, 2 mM EGTA, 2 mM DTT, 0.1 mM PMSF, 10 オg/ml aprotinin, 100 mM NaCl.

Elute buffer : 20 mM Tris(pH8.0), 20 mM ァ-glycerophosphate, 1 mM NaVO4, 2 mM EGTA, 2 mM DTT, 0.1 mM PMSF, 10 オg/ml aprotinin, 300 mM NaCl.

Q-sphrose Fast Flow : 2 倍量のLysis buffer で3回ほど洗浄置換すること。うすく黄緑色がかってくるはず。

 

サンプル調整(Micro-Trap assay場合)

(1) 細胞RAW264.7を10%FCSを含むDMEMで培養する。アッセイの前日に1ウェル に3x10^4細胞を1%BSAを含むDMEM 100 オl/wellでまきこみ一晩培養する。

(2) リガンド刺激は、1%BSAを含むDMEM 100 オl/wellを添加しておこなう。

(3) 培地を完全にすて、液体窒素にて細胞をプレートごと凍結させる。

(4) 凍結した細胞を 100 オl/wellのlysis bufferにて溶解させる。

(5) マルチスクリーンプレート(MILLIPORE:MDAV6550) に50% (V/V)のQセファロー ス/lysis bufferのスラリーを 100 オl/welllいれて、吸引により洗浄する。

(6) 細胞のライゼートをここに添加し、4℃で30分間インキュベートする。

(7) このプレートをフィルトレーションシウテム”バキュームマニフォールド (Millipore)にセットし、100 オl/wellのlysis bufferで2回洗浄除去した。

(8) 100 オl/wellのelute bufferを添加して、4℃で30分間インキュベートする。

(9) 300mMのNaClにて、セファロースより遊離してきたサンプルをアスピレートして、 下にセットした別のUプレートに回収する。

(10) そのうち、15μlをkinase reaction に用いる。

 

Kinase reaction (BIOTRAK MAP kinase assay kit を使用する場合)

 

(11) 15μlのサンプルと10μlのbuffer と5μlのsubstrate solutopn と1 オCi/sample の [γ-32P]ATPとともに96 well plate 中で混合する。

(12) 37℃で30分間反応させる。

(13) 反応stop solutionを10 オlづつ、各well へ添加する (total で40オlになります)。

(14) 各反応液を10 オlづつバインディングペーパー( P81-phosphocellulose paper, ワッ トマン)にスポットします。

(15) 約250mLの0.5%リン酸を洗浄用のトレイにいれ、バインディングペーパーを浸 し、トレイを軽く揺するようにして洗う。

(16) この操作を1時間に2~3回くりかえします。

(17) バインディングペーパーをとりだしてドライヤーなどで乾燥させる。

(18) イメージアナライザーで解析する。