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7.マウス腹腔侵出性マクロファージの採取(和賀巌)

[材料/ 器具]

(1)マウス(通常6~10週で使用、雌の方がおとなしいので採取にむく)

(2)消毒用エタノール(70%)

(3)シリンジ:5mlのもの

(4)注射針:注射用(26G)、細胞回収用(22G)

(5)解剖器具:ハサミ、ピンセット

(6)ポリプロピレン製遠心チューブ(CORNINGのオレンジキャップ(15ml)は細胞が 接着しない ので便利である。)

(7)PBS (4℃に冷えている方がよい。 2mMEDTAをいれてもよい。)

(8)マクロファージ誘因物質

A.10%(W/V)プロテオースペプトン(Difco社:PROTEOSE PEPTONE, 0120-01, 454g ) : MilliQ水 で調整し高圧蒸気滅菌後-20℃にて分注保存する。6週のマウス一匹より約3x106個の マクロファージが回収できる。

B.Brewer's チオグリコレート培地(Difco社: BREWR TIOGLYCOLATE MEDIUM, 0236-01- 5,454 g): 通常、以下の方法で6週のマウス一匹より約2x107個のマクロファージが回 収できる。

C.他に、500μl の流動パラフィン、1 mlの5%カゼイン、BCG死菌などを用いる方法も知られ ている。

(9)てぶくろとマスク(マウスアレルギーにならないように着用しましょう。)

 

[方法/コツ]

(1)刺激物質(*)をマウス あたり2ml注射(ip)する。

(2)3~4日マウスを飼育する。

(3)首を切り脱血死(**)させる。

(4)マウスを70%エタノールで消毒する。

(5)腹部外皮に切れ目をいれる。

(6)外皮をはいで腹膜を露出させる。

(7)冷PBSを5ml腹部に注入する。

(8)3分ほど腹部(***)をマッサージして細胞を浮遊させる。

(9)脂肪塊をさけて注入したPBSをなるべく多く回収する。

(10)遠心チューブ(氷冷)にいれる。

(11)遠心(1000rpm,5min.4℃)する。

(12)沈澱=マウスマクロファージ(****)

 

[注意点]

*: SPF(specific pathogen free)の正常動物から無刺激で採取したマクロファージを「常 在性マクロファージ」と呼ぶ。無刺激の場合、上記の方法でマウス一匹より約106個の 細胞が回収でき、そのうちの約半数が常在性マクロファージである。

**: 頚椎脱臼では、腹空に出血を伴うことがあるので注意を要する。

***: 腹部のマッサージでは、腸を中心に行うと回収がよいと思う。肝臓の方までマッ サージすると出血を伴うことがある。

****: 通常白色の細胞沈澱が認められるはずである。もし、出血により赤血球の混入が あり実験上不都合な場合は溶血する。